お元気ですか、MrBachLoverです。みなさんは音楽院で学んだことはありますか。わたくしは音楽の専門教育は受けておらず音楽院で学んだことはありません。一体音楽院ではどんなことを教えているのだろう、なんて思いますけど、その一部を垣間見れる本のご紹介です
この本の著者のゲンリッヒ・ネイガウスさんはピアノの教授でピアニストのリヒテルの師匠だよね
お、良く知ってるね〜、その通りだよ。ゲンリッヒ・ネイガウスさんはピアニストとしての演奏活動もしつつ教授をしていて、このひとの一日は36時間ぐらいあったんじゃァないかっていうぐらい、たくさんの生徒を教えて、たくさんの演奏会もした凄い人だよ
ピアノ演奏芸術 ある教育者の手記 ゲンリッヒ ネイガウス (著)/森松 皓子 (翻訳)
2003年に第一刷が発行されています。ネットで書かれているほどの読みにくさはなく、翻訳がとても良くできている様に思います
冒頭から、少し内容をご紹介します
1.音楽を学ぶ人は、音楽を学び始める前に、精神的に音楽を操っていなければならない
2.どんな演奏も、音楽、音楽を奏でる人、音楽を奏でる楽器、の3つの要素で成り立っている
このどれか1つに偏ってはいけない
ピアノブログ界隈で有名な、多くのピアニストの先生を務める方のブログなど見ていると、明らかに楽器の音色にこだわりすぎだよな〜、って思いました
その辺りの偏りに関して注意してくれているのは流石ネイガウス先生だと思います
また、とにかく演奏しようとしている音楽が頭の中になければ上達は望めない、といったことも書かれていたと思います。実にストレートな教えだと思いました
3.技術について
技術という言葉は、ギリシャ語でテクネーと云い、テクネーは技術という意味の他に、芸術という意味もあるのだ
って書いてました。これって、凄いことですよね。技術に走って芸術性が足りない、みたいな議論をみかけたりしますけど、それって、本当は意味がなくって、技術を極めれば芸術そのものを極めることになるのではないでしょうか。つまり、まだまだ技術が足りないから芸術性に物足りなさを感じるということだと思うのです
4.演奏においては、ただ上手に演奏できるということだけでは不十分で、人間として大きな器であること、その人の芸術を介して人間としての偉大さが見られることが大事だる
これは本当にその通りだと思います。有名なピアニストのラフマニノフOp.32-10 の演奏をYouTubeで見ましたけれども、テクニック的には素晴らしいんですが、どうもいま一つ、心に響いてこなかったりします、音色が美しい、とか、倍音がたくさん鳴っている、とか、そういうことでは語れないいろんなことがあると思うんです
中学生ぐらいの男の子がラフマニノフOp.23-5 をかなり上手に弾いてたりしますけど、巨匠の演奏を聴いたときのように中間部や終盤でぐっと来る感動みたいなものが湧いてこなかったりするんです
わたくしにはこころの「空っぽ」が見えてしまう…
音楽作品の <芸術的イメージ>
音楽的な教育を受けていない人の演奏は、音楽の語法がわからない。彼らが身に着けているのは勝手なつぶやき、貧弱な思想の断片、… このような演奏と完全に対称的なのはスヴャトスラフ・リヒテルの演奏である。彼は初見で視奏しながら音楽そのものを殆ど完璧に伝えてくる
コレって、凄く本質的なことなのだと思います
リヒテルは楽譜の読み方を誰よりも熟知していた人だと思うんです
ネイガウスの時代はCDやレコードなどがそれほど普及していたわけでもなく、本物にふれる機会が凄く限られていたと思うんです
だから、音楽の専門的な教育を受けていない人は、結局、譜ズラだけ追うような演奏になっちゃうんだろうなあ、って思います
技術について
- 何をなすべきかの目的が鮮明になればなるほど、どの様に実現すべきかがハッキリしてくる
- あらゆる曲が弾ける高い技術に達するには、鍵盤に触れる指先から腰掛け台までの全てを使わなければならない
などなど、本当にたくさんの鋭い考察が書かれています
結び
以上の内容は本読に書かれているほんの一端を紹介したに過ぎません。内容的に本当に充実していて、全てを読むのにとても時間がかかりましたけれども、他にも色々なエビソードが書かれていてとても勉強になる一冊でした
他には、例えば、ピアノ演奏のテクニックは限られていて、それらをマスターすれば高校生ぐらいの年頃で十分にリストの超絶技巧が弾ける生徒も出てくる、とか、
音楽を内面に持っている人は、自分自身が音楽の最高の教師になってくれる、みたいなことも書いてありました
ネイガウス先生はたくさんの生徒を教えており、才能の乏しい生徒に対しては徹底的に辛口な文章が時々出てきます
そういったところも含めて、本書はとても興味深く、読者の視野を大きく広げてくれる1冊だと思います
全てのピアノ弾きにオススメの1冊です
ではでは〜
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