お元気ですか、MrBachLoverです。リーマンピアノ弾きの皆様はピアノの歴史やピアノの構造に興味をお持ちでしょうか。わたくしが最近はまっている調律師YouTuberとしチャンネルの動画によるとヨーロッパのピアノ弾きは皆さんピアノの歴史や構造にとーっても詳しいのだとか。ピアノの歴史や構造に関する知識がピアノ演奏に活きてくるのだそうです。という訳で今回はピアノ関連書籍「1冊でわかるピアノのすべて」のご紹介です
ピアノの歴史や構造を知ったからといってピアノ演奏が上達するとは全然思えないんだけど。
そんなことないんだよ。ダルシマーっていう楽器のことや、世界で初めて作られたピアノの話、エスケープメント機構など、知れば知るほど現代ピアノの響の聞こえ方が変わってきて、演奏に工夫がうまれるんだヨ。
ピアノや音楽関連の書籍を読むことで、ピアノのレッスン効率を大きくアップすることができます。今回ご紹介する本もきっとあなたのピアノ演奏やレッスン効率をアップしてくれると思います。「6.6倍」については次の記事を御覧ください
本の概要
今回ご紹介する本「1冊で分かるピアノのすべて」の著者はピアノ調律師の青山一郎さんです。調律師だけに、とにかくピアノのことについてとても詳しいです。これ、どうやら調律学校の教科書レベルの本らしいです。本書は次の3つの章で構成されています
- ピアノの歴史
- ピアノの音と音律
- ピアノ機能と構造
各章を通して、ピアノの前身となった楽器や、ペダルの効果、音色が変化する原理などなど、挙げきれないほとたくさんのことを学ぶことができます
そして、それぞれの知識を演奏に活かす閃きや気付きを得ることができると思います
それでは、各章から掻い摘んで内容を見ていきましょう
ピアノの歴史
ピアノが初めて誕生したのは1709年で、現在のピアノにかなり近い構造をしており、
ダンパー・ペダルがあり、
鍵盤を押すとハンマーが弦を叩く機構(アクション)が実現されており、
アクションはエスケープメントの機構まで実装されています
エスケープメントについて触は、3章の紹介で触れてるので、ちょっとお預けしますね。
ピアノの前身はダルシマーという楽器です。ダルシマーはピアノのフレームと弦に共鳴箱がついた楽器を奏者が手でマレット(打楽器のバチ)を持って弦を叩いて音をだす楽器です
ダルシマーには音を消す仕組み(ダンパー)が付いてないので音は延びっぱなしなのですが、音が延びすぎず、良い感じに美しく響いてくれたようです。また、バチで叩くことで発音のニュアンスや音の強弱を色々とつけることができ、とても表情豊かな演奏ができたそうです
このようにダルシマーはとても魅力的な楽器だあったので、ピアノが出現する何世紀も前から世界中に広まってたそうです
一方で、皆様おなじみのチェンバロもピアノの前身の楽器です。チェンバロは鍵盤で音を鳴らすことができ、離鍵するとダンパーで音を止めることができました。しかし、鍵盤を押すと爪で弦を弾く機構なので音色や音量を変化させられませんでした(正確には2段鍵盤の導入で音量を変えられる物もあった)
ダルシマーとチェンバロの良いとこ取りをしたのがピアノです、みたいなことが色々と詳しく書かれています
ピアノの歴史の章を読んだ感想
ピアノの歴史の章を読んで、まず思ったのはペダルを踏むとダルシマーに変身するんだな〜、ということ。
ベートーヴェンの月光の第1楽章を当時ベートーヴェンが使っていたフォルテピアノでダンパーペダルを踏みっぱなしで弾くとダルシマーのような幻想的な音の世界が創れたのだと思います
現代ピアノでも、ちゃんと調整されたグランドピアノなら絶妙にハーフペダルを掛けて、ベートーヴェンが意図した幻想的な月光の1楽章の絶妙な響を出せるはずです
ピアノの音と音律
この章では音階が出来上がった歴史や、チューニングの種類と違いについて書かれています
皆様、純正調ってご存知ですか?
ピアノ(平均律)でハ長調のドミソを鳴らすと、音が微妙に濁っているはずです。なぜなら平均律の世界ではハ長調の構成音(ドレミファソラシ)はハ(C音)の整数倍の周波数になっていないからです
一方、純正調の世界では、ハ長調のドミソを鳴らすと澄んだ響がするのです
理由は、もうおわかりですね。周波数がC音の整数倍になっていてきれいに響き合うからです
では、ハ長調でチューニングされた鍵盤楽器で他の調の曲を弾くとどうなるのか???
電子ピアノでハ長調の純正律(ハ長調の純正調でチューニングされた調律)でフラットが2,3個ついた曲やシャープが2,3個ついたの曲を弾くと分かるのですが、頭の中がひん曲がりそうな、グニャーっとした音が鳴ります
そこで、ある程度の範囲の調まで対応する調律がいくつか考案されました
しかし、対応する(=妥協する)調を増やせば増やすほど、純正調からは外れて音が濁っていきます
こうして生まれた究極の妥協の産物(?)が平均律なのです!
ピアノの音と音律の章を読んだ感想
バッハの時代、一般的だった調律はミーントーンです。ミーントーンは、平均律の一歩手前の調律で、一箇所の半音階の音の高さを除いて全てが均一な半音程なのです。
そして、バッハの時代に一般的だった楽器はチェンバロ。
わたくしの高校時代の同級生が高校の音楽教師になったのですが、4年ほど前に地元の関西に帰ったときに話をしたところ、高校生の頃のピアノの名手だった彼は、
今はなんと、ピアノはホコリを被って調律してなくて、
チェンバロをもっぱら弾いているのだそうです
彼はチェンバロを自分で調律するそうで、先程紹介したミーントーンで調律していろんな音楽を楽しんでるのだとか
フム〜、同じ鍵盤楽器でもいろんな楽しみ方がありますね〜
ピアノの機能と構造
弦、響板、駒、アクションなどについて書かれています
弦は、発音する元の音を作る振動源です。同じ音を発音するのに弦を太くすれば長さを短くできます。低音源は太くするために巻線が採用されており、最低音の付近では巻線が二重になってるのだとか。
また、巻線を採用しなければ低音の弦は4メートルぐらい必要だそうです。4メートルもあるピアノは実用的ではないですね
次に、弦の響を響板に伝える駒の話ですが、バイオリンビオラ、チェロ、コントラバスなどの弦楽器の駒は響板の中心にあります。その理由は、弦の振動を効率的に響板に伝えられるから。
でも、ピアノの場合、とくに低音部は駒を響板の中心に置いてしまうとピアノがとても長くなりますね。なので、駒をどうしても端っこに持ってこざるをえないのです。コンパクト・グランドピアノの場合、特にこの問題は深刻です
そこで考案されたのが、駒を鉤型にして、弦の接点は響板の端っこ近くにして、駒が響板に繋がる箇所は3〜4センチほど(?)響板の内側にくるようにする機構です(次の写真参照)
確かに、マイ・グランドピアノKG-2Cちゃんは奥行き178センチですがグッドな低音が鳴ってくれます♥
アクション、特にエスケープメント機構についての説明もありました。打弦した後、ハンマーが弦にギューと押し付けられたままだと音は止まっちゃう訳です。でも、エスケープメント機構があることで、アクションは次の一連の動作をします
- 鍵盤を押すと、
- ある時点でハンマーと鍵盤が連動しなくなり(エスケープする)、 ※1
- ハンマーは慣性の法則で性弦に向かっていき、
- 弦に当たって音が鳴る
- そして、ハンマーは弦に弾かれて弦からうまく離れる ※2
この動作の※1と※2のの動きをする為のしくみがエスケープメントの機構らしいですね〜
そして、グランドピアノには、このエスケープメントの機構が2つ付いていて、結果、鍵盤を上まで戻さなくても連続で打弦できます
シフトペダルの説明もありました。グランドピアノの左のペダルを踏むとアクションが右にシフトして、3本の弦の内2本を叩くようになります。低音源は2本の内1本だけ打鍵されるようになります。打弦されなかった弦は共鳴して音を発っします
ピアノの機能と構造を読んだ感想
ピアノの機能と構造の章を読んで思ったことの1つ目は、エスケープメントの機構が付いているのに、
- いまいち美しく響かないタッチの人と、
- とってもよく響く澄んだ音を鳴らす人がいる
ということ。なんでやねん、って感じですよね〜
ロシア・ピアニズムの奏法は鍵盤の浅いところで力を掛けて鍵盤を下に放り投げる感じなのですが、このように意識して弾くことで、とても音色が美しくなります
この辺りにヒントがあるのだと思います
2つ目は、シフトペダルの使い方。
シフトペダルを踏むと3本の内2本が打弦される、または、2本の内1本が打弦されます。打弦されなかった弦は、音がならないのではなくて共鳴して鳴ってくれます。
この、打弦されなかったけど鳴っている弦
のお陰で、音がよーく延びる様になるのです
ホウ、これってバッハの楽曲の演奏に応用できるんじゃない???
バッハの曲は現代ピアノを前提としておらず、音を延ばしっぱなしにする楽曲がいくつもあります。その様な曲を演奏する際に、シフトペダルを使うとどうなるのか。そうです。音がよく延びるのでとても助かるのです!
結び
この本を読むと、ここでご紹介したこと以外にもたくさんピアノの知識を仕入れられます。ピアノという楽器を深く理解した上で演奏するのと、そうでないのとでは大きな違いですね
ピアノ演奏の品質を向上したい、レッスンの効率をアップしたいと思われる方にはとてもオススメの一冊です
ではでは~
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